異風人

《何と言っても私は、大学教授であるぞ。山高帽子と燕尾服によって、威厳は十分に備わっておる。道すがらすれ違う者が皆、振り向くのは、この威厳があるからである。その証拠として、隣の奥さんが、深々と腰を折って、挨拶をしてくれるではないか。これは、私に対する敬意の現れである。コズエが居酒屋を去ったのは、私の講義が身に染みたからであろう。ママもそのように言っていたから、そうに違いない。コズエも今ごろは、波紋の論理に惹かれて、一色を求めて歩を進めているに違いない。居酒屋の民の丁重なるもてなしも然りである。それにしても、コズエは、後一歩と言う所であった。》