異風人

別段、小夜は、書斎に閉じこもれとは言っていない。もしも小夜が、そのように命令したのであれば、私は、ご主人様で、小夜は侍女である。従って、書斎から逃れて、応接間に足を運ぶことは、簡単である。何故か小夜の一言一言は、そのようにできない、子を思う母の愛のようなものがあった。何度、書斎から逃れようと思ったことか。簡単に、しかも何時でも書斎から逃れられると言うこの環境に身を置くことは、ゆるぎない強い意志が必要なのである。それは、吉平にとって、これまでに体験したことのない、極めて厳しい環境であった。
話し相手もなく、書斎の椅子に一人腰をおろし、重苦しい空気に包まれた吉平は、茫然とした面持ちで思いに耽った。