書斎には、女性の行き届いた心が通う華やかさは一切ない。使い込まれた黒に近い茶色の書棚や壁は、代々受け継がれた先代の重圧感を秘めている。普段から、吉平にとって、この書斎の空気には、重苦しいものがあった。吉平としては、あの絵が掛けられている以上、小夜の言い付けに背くわけにはいかない。吉平は、書斎に足を運ばざるを得なかったのである。後ろ髪を引かれる思いで、書斎の分厚いドアを開ける吉平の足は、鉛のように重かった。