次の日、小夜は、早速この絵を額縁に納めた。そして小夜は、応接間ではなく、ご主人様の書斎にかけたのである。『私が言葉で話すよりも、絵が語りかけてくれると思います』と言う主の言葉には、これ以外に自分を言い現わす言葉はないと言う響きがあった。さすがの吉平もその響きを感じ取ったのである。主に一本取られた感はあるが、吉平は、公園に出向くことができなくなっていたのである。
「小夜、あの絵を見て小夜はどう思うかね。彼の言うには、私が言葉で話すよりも、絵が語りかけてくれると言ったのだが、何か語っているかね」
「小夜もあの絵を見つめました。そして、引き込まれました。あの絵には、鏡面の水面よりも更に深い、行き着くことのできない水面があります。船に立っている人影は、無垢の純白であり、静止しています。従って、水面には波紋もありません」
「私の波紋の論理が、否定されていると言うのか?」
「いいえ、そうではないと思います。その逆だと思います」
「どういうことかね、小夜」
「小夜、あの絵を見て小夜はどう思うかね。彼の言うには、私が言葉で話すよりも、絵が語りかけてくれると言ったのだが、何か語っているかね」
「小夜もあの絵を見つめました。そして、引き込まれました。あの絵には、鏡面の水面よりも更に深い、行き着くことのできない水面があります。船に立っている人影は、無垢の純白であり、静止しています。従って、水面には波紋もありません」
「私の波紋の論理が、否定されていると言うのか?」
「いいえ、そうではないと思います。その逆だと思います」
「どういうことかね、小夜」


