異風人

主は、無造作に散かっている絵の中から、一枚の絵を取り出した。その絵は、太陽の光が全くない水を湛えた洞窟であった。その澄み切った水面には、洞窟の岩肌が映っている。その映った岩肌は、吸い込まれるように、水底深く消えている。この洞窟はどこまでも深く、水面が岩肌の暗闇に細く消えている。水底も見えず、水面の行き着く先も見えない。鏡面の水面よりも、底が深く、奥も深い。その水面に小船が浮かび、その小船には、純白の衣服をまとった人影が、洞窟の奥に向かって立っている。水面には、波紋もない。
この絵は、主が、極致の空間に座っている様であろうか。吉平は、うさん臭そうにその絵を受けとり、帰宅した。そして、出迎えてくれた小夜に、その絵を突き出すように渡した。