異風人

十分に思案した結果、一つの結論に達したのである。吉平は、最も手短な散歩の道を選択した。
出勤前の早朝のお屋敷町は、うっそうとした植え込みに包まれて人の気配はない。辛うじて、新聞配達、牛乳配達が人気を添える。これらの民は、吉平を無視して、オートバイですれ違うのみである。一晩熟慮して、散歩を選択したのであるが、すがすがしいとか、閑静だとかいうのは、ちと道筋が外れたようである。隣の奥さんですら、姿を見せない。すがすがしく、且つ、閑静な空気の中では、何一つことを運べないことに気付いたのである。そこで吉平は、小夜に命令をして、隣の奥さんとすれ違う機会を作ればと考えた。その朝吉平は、早速小夜に命令したのである。小夜はご主人様にこのように応えた。「ご主人様、公園にまで足を伸ばしてはどうでしょう。多くの民に出会うと思います」