主と問答をしているうちに、逆に吉平の頭は、錯乱状態に陥ったのである。吉平の論理からすれば、皆出席で、しかも主席で大学を卒業したのであれば、真実と言う石を持ち合わせていなければならない。もしも、社員や家族友人の全てを包含する真実を主自身が会得しておれば、彼等から逃避することはないはずである。何故か、吉平の質問に対する主の応えは、概ね吉平の論理から大きく外れ、かつ、否定する方向へと進むのである。威厳を保つために、吉平としては、これを何とか食い止めねばならぬ。吉平としては、既に経験済みである、あの車中での二の舞を避けねばならぬ。主を困らせるには、この場において真実の議論を捨ておき、人に解るように説明できないと言っていた、逃避を拾うことに辿り着いたのである。


