異風人

「我が子を愛する母親の心は、女の特権として、実感することによって生まれるということか」と言う吉平の言葉の中に実感と聞いて小夜は、声を弾ませて、
「はいご主人様、ご主人様のおっしゃるとおりです」
小夜は、我が子を眺めるように、吉平を見ていた。そして小夜は、明るい笑顔を見せたのである。吉平としては、『男性の場合に我が子を愛する母親の心は養われるのか?』と言う主の質問に答えねばならぬ。小夜の今の話しでは、確かに教育には無関係であり、かつ、男性には、不可能であるという結論に達した。
「実はのお、小夜、彼の言うには、教育は不要だというのだ。そしてのお、男性の場合に我が子を愛する母親の心は養われるのかと聞かれたのだよ。小夜の話しを聞いて、男性には不可能であるという結論になるが、それでよいのか?」
 小夜は、思った。ご主人様の病を治すには、更にホームレス様との付き合いが必要であると。そうするには、不可能という結論は、付き合いの芽を摘んでしまうことになる。彼の質問は、偉い人の話しを聞き、書物を読んでも解けないと言う謎かけであると、小夜は思ったのである。そこで小夜は、次のように言った。