「その内、お腹の中で、動き出すのですよ。あら、手を伸ばしている。あ、足でけっている。何をしているのだろう。笑っているのかな。それはそれは、楽しい会話が始まるのです。これは、実感している女にしか味わえないものです。この喜びは、夫に伝えることはできないのです。夫には気の毒ですけど。どうすることもできないのです。女の特権です。女は、この楽しい時間を我が子とともに過ごすのですよ。そして、生まれる時が来るのです。早く我が子の顔を見たい。早く、早くってね。出産の時は、生死を分ける苦しみです。この苦しみを乗り越えられるのは、長い付き合いから生まれる愛だと、小夜は今でも思っています。この愛は、実感した女にしか解りません」


