異風人

無礼を働いた彼女は貴重な人であると言われて吉平は、えらく憤慨した。そうした吉平を見て主は、もの静に笑みを浮かべながら、優しく吉平を見守ったのである。吉平の身の回りにおいては、吉平は、大学教授であるが、一歩外に出れば、ただの親父なのである。どちらがどちらに無礼を働いたのかは、当事者相互の心の作用次第で決まるのである。この場面においては、当事者相互の心の作用は存在せず、ただ吉平の病が邪魔をしているのである。この病が癒えぬ限り、彼女は、貴重な人ではない。真実を語り合うには、主としてこの辺りから解き解さねばならない。そして主は、口を開いたのである。
「はい仰せの通りです。貴方からすれば、私には礼節は有りません」
「そうであろう。解ればそれでよいのだ。それでもそなたは、彼女を貴重な人だというのかね!」
「はい仰せの通りです。こびへつらう社員の中には、彼女のような者は一人も居ませんでした」
「そう言う意味であったか」