異風人

公園に着いたのは、ほぼ定刻の二十時であった。そして吉平は、ビニールの扉を開けた。主は、相変わらず目を閉じ、空間の真ん中に座っていた。吉平は、直ぐには声をかけずに、暫くその様子を眺めたのである。主は、吉平を無視していると言うのではなく、吉平の存在を意識していないようである。間接照明の中で、薄黒く浮かび上がっているその姿は、まるで誰も訪れることのない、山奥に座る石仏のようにも見える。暫くして主は、目を開けてキャンバスを凝視した。そして筆を摘んだ。その時に始めて主は、吉平の存在を意識したのである。
「ああ、いらしてたんですか」と、主は、入口につ立っている吉平のほうを振り向いた。無精ひげに隠れた顔は、極めて穏やかだった。
「さあ、どうぞこちらへお入りください」と言って主は、散かっている絵の具やキャンバスを足で押しやり、隙間をあけてくれた。吉平は、最後の外気を思い切り吸い込み、中に入った。