異風人

「小夜もそのように思うか。彼もそのように言って居った。彼の身内の者や友人に話しても、伝えることができないらしい。そして彼の言うには、唯一の伝達手段として、絵を描いているのだそうだ」
「小夜も小さい頃思いました。母親にお腹が痛いと言ったことがあります。どんな風に痛いのって聞かれても、チクチクとか、シクシクとかしか言えなかったのです。本当の痛さを伝えることはできませんでした。その時に思ったのです。本当の痛みが解るのは、母も私と全く同じ腹痛を味わってもらわないと伝えることができないと思ったのです」
「そうか、全く同じ体感をしなければ、人に伝えることができないってことか」
「はいご主人様」
「そうであったか。それで彼はこんなことも言って居った。偉い人の話や、書物は、自分が体感した後に、ああそうか、この人も同じことを体感したのだと確認するためのものだとね。小夜の言うように、腹痛と言う同じ体感をしないと、小夜の腹痛を味わうことができないと言うことかね」