「夜は?」
「夜になると、公園のざわめきもなく、この時こそ私の時間です」
「ああそうかね。さっき目を閉じていたのは眠っていたと言うことか。座ったまま眠っていたと言うことは、もしかして私が来るのではないかとの配慮であろう。キャンバスとやらに急いで色を塗ったのは、無様な姿を見せたくないからであろう。そなたにも、まだそのような気持ちが残存していたということかね」
主は、吉平の問いかけに短く応えるだけであった。この短い受け答えは、無知の現れである。吉平は、このように理解したのである。波紋の論理を講義するには、まだ早い。そこに漕ぎ着けるには、主との接触を深めねばならぬ。それには先ず、身近なことから接近するのがよい。
「そなたは、家族が居ると言ったね?」
「はい言いました」
「そなたがここに居ることを知っているのかね」
「知って居ります」
「一度もこの住処を訪ねてきたことはないのであろう」
「最初の頃はありました」
「見離されたってわけだ」
「夜になると、公園のざわめきもなく、この時こそ私の時間です」
「ああそうかね。さっき目を閉じていたのは眠っていたと言うことか。座ったまま眠っていたと言うことは、もしかして私が来るのではないかとの配慮であろう。キャンバスとやらに急いで色を塗ったのは、無様な姿を見せたくないからであろう。そなたにも、まだそのような気持ちが残存していたということかね」
主は、吉平の問いかけに短く応えるだけであった。この短い受け答えは、無知の現れである。吉平は、このように理解したのである。波紋の論理を講義するには、まだ早い。そこに漕ぎ着けるには、主との接触を深めねばならぬ。それには先ず、身近なことから接近するのがよい。
「そなたは、家族が居ると言ったね?」
「はい言いました」
「そなたがここに居ることを知っているのかね」
「知って居ります」
「一度もこの住処を訪ねてきたことはないのであろう」
「最初の頃はありました」
「見離されたってわけだ」


