異風人

「それはどうも、失礼しました。あなたが居ることすら判らなかったのです」
「それじゃ、今話したことも聞いていないってことか?いや、聞えなかったってことか?」
「仰せの通りです」
「なんだね、画用紙に真っ赤な色を塗るのに、考えていたとでも言うのかね」
「ええまあそんなところです」
「美術大学を出ていないから無理もない。画用紙に色を塗るのに、それだけ考え込むと言うことは、絵の基礎ができていない証拠である。花は赤、空は青である。それとも、画用紙や絵の具を無駄にしたくないという、タケさんやケンさんに気遣ってのことであろう。その気持ちは解る」
「これは画用紙じゃなくて、キャンバスといいます」
「ほうそうかね。初めて聞く言葉だ。キャンバスだかなんだかわからないが、私が援助してやってもよい。金には困っていない。帰宅すれば侍女も居る。昼間は何をしておる」
「気が向いた時に絵を描いています」