異風人

主は、黙って吉平の言うことを聞いていた。タケさんもケンさんも、日頃主を目にはしている。三人の間には、ここに居を構えた経緯ぐらいで、それ以外の不満や悩み事等の深い会話はないのである。ましてや、吉平のような哲学的な人生感などの会話もない。故に、世間一般で言う、気心の知れた両隣でもない。この三人の間には、見返りを期待するような義理人情もないのである。
ケンさんとタケさんは、古雑誌と空き缶の商いで、町に出る。従って二人は、自動車やテレビと言った文明に接する機会がある。主は、この住処から出たことはない。夜になって主は、金魚のように綺麗な空気を吸うために、人気のないこの公園に姿を見せるだけである。人との接触もなく、文明との接触もなく、主は、極致の空間で、絵を描いているのである。