異風人

吉平は、当たりを見回した。いや、見回したというよりも、わざとらしく相手を威圧する光で、庇の奥から目玉を動かしただけである。キャンバスは、無造作に散かっていた。吉平は、その内の、姿を全面に見せている一枚のキャンバスに目をやった。そのキャンバスには、多色の絵の具が、不規則、且つ、大胆に塗られていた。吉平にとっては、意味不明の代物である。
「あなたは、これを絵と称するのかね」
「ええ、まあ、そのように思っています」
「ただ絵の具を塗りたくっただけじゃないかね。絵の具の無駄使いだ。タケさんやケンさんに申し訳ないと思はないかね」
「それが、二人は何も言わないのです」
「二人は、この絵を見たことがあるのかね」
「さあ、どうだか判りません。何せ、互いの住処の出入は自由ですので」
 吉平は、教育に携わる者として、この主の生き様を許す訳にはいかない。吉平の威厳は、更に高さを増したのである。