異風人

「ええそうですね。おっしゃっていることが解るような気がします。自分固有の真実は、一つだと私も思います」
 店主は、吉平のことを何一つ聞かなかった。ただ一つ、何故ここにいるのかを尋ねただけである。そして吉平は、「コズエと言う女性を探している」とだけ応えたのである。店主は、コズエとの経緯を尋ねなかった。店主は、吉平との短い会話の中で吉平を眺めるだけで十分であったからである。吉平も又、その女性にコズエの探索の援助を頼まなかった。その理由は、威厳を保つためである。ここに座を構えて、三日になる。三日も経てば、偶然性は薄らぐはずである。コズエに石を投じて、波紋を起こさせ、その波紋を多色に伝達するには、それ相当の年月を要する。存命中に名を残すには、コズエを早く見つけねばならない。吉平は、この場に見切りをつけたのである。そして吉平は、おもむろに腰を上げ、胸を反らせて、流れの中に消えていった。