この日も吉平は、コズエに出会わなかった。多色の流れの中で、網に引っ掛かる獲物は、偶然性が高い。そのように解析した吉平は、この店先に暫く座を構えようと決意したのである。
吉平の存在効果の現われであるかどうかは定かでないが、足を止める若者が多くなったような気がする。足を止めた若者は、黒い布一面に広げられている物を食い入るように見ている。それは、ハガキほどの大きさの紙に、文字と絵を書いたカードであった。
「これいいわね。今の私の心境にぴったりです。一枚いくらですか?」
「百円です」と、店主は、短く応える。その一枚を手にした若者は、広げられた一枚一枚を丹念に見て、四枚買っていった。次の若者は、
「私と同じ境遇に居る人も居るんだ!力づけられます」と言って、三枚ほど買っていく。これらの民を見て吉平は、始めて捜索の視線をそれらのカードに移したのである。カードには、店主がサラリーマン時代に思い悩んだことが記されていた。そして吉平は、威厳に満ちた低い声で店主に声をかけたのである。
吉平の存在効果の現われであるかどうかは定かでないが、足を止める若者が多くなったような気がする。足を止めた若者は、黒い布一面に広げられている物を食い入るように見ている。それは、ハガキほどの大きさの紙に、文字と絵を書いたカードであった。
「これいいわね。今の私の心境にぴったりです。一枚いくらですか?」
「百円です」と、店主は、短く応える。その一枚を手にした若者は、広げられた一枚一枚を丹念に見て、四枚買っていった。次の若者は、
「私と同じ境遇に居る人も居るんだ!力づけられます」と言って、三枚ほど買っていく。これらの民を見て吉平は、始めて捜索の視線をそれらのカードに移したのである。カードには、店主がサラリーマン時代に思い悩んだことが記されていた。そして吉平は、威厳に満ちた低い声で店主に声をかけたのである。


