「…ある程度、か。ならば手短にすませよう」
向かいのソファーに座る男性は、そう呟くとまたアレンを見つめた。
平然を装いながらも何を言われるのだろうと心の中で構える勇者。
その側近も緊張しながら見守る中、笑ったままの目の前の彼はやっぱりあの話を切り出した。
「…俺の国の者がいらないことをしたようで。すまなかったね」
――…予想的中。
「……いや、こちらこそすみませんでした」
アレンはそう言うと自分も相手を見つめ、今一度彼を探り始めた。
――…悪魔の長、ジリルティウス。
通称ジリル、それが目の前の彼の正体。
この男性は悪魔の国ジスカルを治める唯一の存在であるのだ。
彼は今、式典中に騒動を起こした悪魔のことを言っている。
アレンが強制的に追い払った、迷惑以外の何物でもなかったあの男のことを。
…しかしそのことだけでこの男がここまで来るとは、正直到底思えない。
何せ世界会議にも顔を出してくれなかったのだから。
そんな訳で実はアレンは彼とは初対面だったりする。


