ミュリエルの諦めたような物言いにアレンは微かに眉を潜めた。
天使族の長であり、ヘレヴィアのトップに君臨するのがミュリエルの言う天使ミカエル。
性別不詳、年齢不詳のミカエルは、アレンの中では優しそうなイメージしかなかった。
会ったのは一年半前の世界会議だけなのだが、あの人は勇者になって一年も経っていなかったアレンにも丁寧に接してくれた。
その人が命令を強制するなど、想像も出来ない。
また大人に騙されたかな、などとすっかり信じる気の失せたアレンは、ミュリエルを見下ろし頭を掻いた。
それを不安そうに見る大天使。
「……わかった。しばらく休み、ってことにするから」
その勇者の言葉にミュリエルは目を再び輝かせ、ありがとうと本当に嬉しそうに礼を言った。
実は彼女は大天使の役職をなくされるのではないかと危惧していたのだが、アレンにはそんな考えは1㎜程も浮かばない。


