そんなことを考えながら目の前の女性を見下ろしていると、彼女はこちらに真剣な表情を向けてきた。
それからふんわり癖のある金髪を揺らし、口を開く。
「あのね、簡潔に言うと、私しばらくこの国にいれないの」
「………いれない?」
何で、と訊ねるアレンにミュリエルは困ったような顔をした。
しかしその彼女が言わなくとも、アレンは自分で少し考えてその意味に気付く。
「…ヘレヴィアから招集でもかかってんのか?」
──…天使と悪魔の争いが激化しているから。
レヴィオルの大天使になるほどの実力を持つミュリエルは、貴重な戦力として重視されるのだろう。
天使は皆元はヘレヴィアの住民。
レヴィオルにいる彼らは、この国の豊かな自然を求めて海を渡って来た者達だ。
戻って来いと言われたら、母国に戻るのが普通。
「……そう。ミカエル様に言われちゃったから、嫌でも戻らなきゃ。
私、戦うのは嫌いなんだけど…」
「…………強制?」
「うん、まぁそうなるわね」


