「……ごめんね。事情が事情だから、誰にも言ってなかったのよ」
ヴァンヌはそう言い謝ると、デスティンからそのルシイルを受け取った。
目を細めて一気に母親の顔になる彼女。
「……じゃあ、何で今日は連れてきたんですか?」
マケドニスが赤ん坊を見ながら小さく二人に訊ねた。
ヴァンヌはデスティンを見上げると、眉を下げて目を伏せる。
「………頼みが、ある」
喋らなくなったヴァンヌの肩に手を置き、普段無口なデスティンが口を開いた。
その銀色の瞳は、アレンの碧のそれを見据えて離さない。
「………俺達は、こんな関係だから追われている。
さっきの悪魔がそれだ」
「………………。」
──…何となく。
これから言われるその“頼み”がわかった気がして、アレンは眉を潜めた。
それに気付いていながらも、デスティンは全く動じずに続きを言う。
「……迷惑をかけておいて申し訳ないが…。
…この子をしばらく、預かってほしい」


