「さてと」


完璧にメディンの背中が見えなくなったところで、ウィスカは伸びをしふぅと息を吐いた。

のんびりしたその様子にここから去ってくれないと動けない、と勝手に焦るアレン。


が、彼は次の瞬間別の意味で焦ることとなる。





──…ウィスカが、こちらに目を向けた。





(……!?)


まさか、と冷や汗をかくアレン。

気配は綺麗に消した筈なのに。



一瞬動物の鳴き真似でもしようかという考えが頭を過ったが、自分が許せないので却下した。


バレたら超恥ずかしい。

バレなくても一人で恥ずかしい。


第一そんなレパートリーを持ち合わせていないアレンは、ただじっと息を殺すしか出来ない。




「………気のせいか」


しばらくの沈黙のあと、そう呟いたウィスカはくるりと正反対の方向に向きアレンに背を向けた。


内心ホッとする44代目勇者。

が、表に出しては今度こそ見つかってしまう。




(よかった…)








「なーんてな」


「、!」


「誰だ?さっきからそこにいるのは。出てこいよ」



思わずビクリと揺れる肩、擦れる葉の音。



しまったと思ってももう遅い。