「どうしてですかジリル様!」


──…ジスカルの王室。


そこに呼ばれるでもなく自ら赴き、ディルネは父親に抗議をしていた。



「どうして逃がしたの?扉が開いた時点で気付かれたんでしょう!?」


喚くディルネに対しジリルは無言。


テーブルに肘をつき両の手の指を絡ませ、目を伏せ娘の訴えを聞いていた。



「あれは逃がしてはいけなかった!挙げ句の果てに囚人たちまで…!」

「……………………。」

「私達はあの血がないと生きていけません!」


最後に思いきりそう言い、ディルネは微動だにしない父を見下ろした。

彼女が言い終わったと察したジリルは、王座から腰を浮かしもしないで娘を見上げ、やっと口を開く。



「……言いたいことはそれだけか、ディルネ」

「………っ、はい」

「……よかろう」


呟いたジリルは立ち上がり、今度は自分が相手を見下ろした。

先程までの勢いはどこへやら、ディルネは少し怯むと戸惑いがちに父を見上げる。


「まず言っておくが、あれはお前の失態だ。勇者はお前に任せると言っただろう」

「でも父様…」

「ジリル様と呼べ。何故私がお前の失態の尻拭いをしなきゃならん」

「……………………。」