薄暗い地下牢。


その牢屋から脱出し、床に座り込んで輪になる集団があった。



「…わかったか?」



その輪の中心に胡座をかく人物、拉致被害者アレンは周りを見渡し確認をする。


多いと思っていた囚人は思ったより人数が少なく、ざっと数えても30人程しかいなかった。


…聞いた話では昔はもっといたらしいが。



ちなみにアレンは全員の手枷と足枷を外してみせた。



「要するに立ち止まるな、死ぬ気で進め…ってことね?」


エレス族のあの気の強い女性──ハルアがアレンを見据えて言う。


要しすぎたその内容に心の中でツッコみながらも、勇者は頷くと人差し指を埃っぽい地面に沿わした。



「…あぁ。俺とお前らエレス族の末裔の魔力があれば、バレたとしても凌げるだろ。

俺が先頭を突っ切って、バレたらお前らにわかるように目立つ魔法をする。

それまで誰も魔法は使うな」


スラスラと細く長い指を動かしながら淡々と話すアレン。


埃っぽい地面に簡単な図が描かれていき、それが完成すると彼はグロアに目を向けた。