「いや、いいけどよぉ。明日でもよかったのに」


ギルクはそう言うと自分にもこぶ茶を入れてくれたウリナに礼を言い、それをずずっと啜った。


義理妹は嬉しそうに頷くと、姉の夫の横にちょこんと腰掛ける。



実はもう街長となる準備を進めているギルクは、明日エニスと会談をする予定だった。


だからそんな発言をしたギルクにユナルは苦笑い。



「…仕事のついでじゃ嫌だったんだ。訊きたいこともあったし」



こぶ茶を飲むことをやめたエニスは、そう言うとちらりとユナルを見た。


それに気付いたユナルは困ったように眉を下げるだけ。



「なに」


が、と様子のおかしい二人に訊ねようとしたときだった。









「たっだいまあ～！」



　──…ガラガラ、ピシャン！


物凄い音量の音と声が玄関から響いてくる。



続いてバタバタと何とも煩い足音が聞こえてきた。




そして──…




「ギルク兄ちゃんっ！あっそぼー!!」


「あー、お兄ちゃんおかえりぃ」


「おいドアを壊すなドアををぐはぁ!!」



すっかり大きくなった少年が、ギルクの注意を無視して彼に飛び付いた。


椅子をひっくり返して床に突っ込んだギルクは変な叫びをあげて痛みに耐える。



「うあっ、ごめんギルク兄ちゃん!!」



そう言って彼の胸から顔を上げたのは、ウリナの兄でありイルの弟であるエジャス＝シーアだった。