何千人何万人の人の視線を一気に浴びながら、アレンは懐かしむように目を細めた。
その表情一つ一つに、聴衆達は惹き付けられる。
《……俺は、勇者になってからもその前も、何度か間違いを犯しかけた。
それもこれからもあるかもしれない。
でもぶん殴ってでも止めてくれる仲間がいる。
それは…すごいことだと思います。
…そんな仲間がいたから、二年間こうして勇者を続けられた。》
そこで何故か照れ臭そうに嬉しそうに、鼻をこするギルク。
聴衆もレイ達も揃って少し吹き出した。
アレンはその様子を見て小さく笑うと、また言葉を紡いでいく。
《…まだこんな風に馬鹿だけどいい仲間なヤツがいなくても、きっといつか出来るから。
苦しくても辛くても、それを信じて生きてほしいです。
憎しみからは、憎しみしか生まれないし。
生きてなければ意味がない。》
──…再び静まり返る広間。
全員がアレンの話に耳を傾け、聞き入ってしまっていた。


