「ねぇ、グロア」
「なぁに?姉様」
姉の動きを追っていた少女は、声をかけられ顔を上げる。
その大きな瞳には、真剣にアレンを見つめる女性の姿が映し出されていた。
「……これ、綺麗よね」
「? うん、かっこいい」
そこまで言ってから何かに気付いたのかグロアはハッとし、少し頬を赤くする。
…彼が起きていることを忘れていた。
しかしそんな妹の様子に気付くことなく、ディルネは苦笑する。
「あんたって子は…素直の塊ね」
「それって褒め言葉ッ!?」
「はいはい、そうよ」
目を輝かせ言った妹に、またも女性は苦笑した。
えへへと笑った少女は、「で、綺麗なのがどうしたの?」と話を元に戻す。
ディルネは頷くと相変わらずアレンを見つめ、そして艶やかな唇を動かした。
「…綺麗で、強いの。いわば今の私達の秘密兵器。
天使達を倒してからも、手放すのは惜しいと思うのよね」
「……………………。」
今度はグロアが醒目した。
姉の表情が、とても――恐ろしいモノに見えて。
笑っている、笑っているのだが、その目は危険な光を孕んでいる。
思わずゴクリと唾を飲み、グロアは何も言えず立ち尽くした。


