「…なっ…何して…!」
いきなりの状況――しかもピンチだと言うのに、グロアはつい顔を赤くしてしまった。
だってこの美形の有名な青年が、自分をベッドに押し倒しているのだから。
腕を引っ張られた、そう思ってから一秒も経っていない。
――…なんていう速さ。
(これが、レヴィオル国勇者アレン=ブロドニス…)
今までは正直捕らえられて弱っているただの青年にしか見えなかった。
かっこいいし、見ているだけでも暇つぶしになる。
そう思って通いつめていたのが間違いだったらしい。
「あたしを脅す気…?」
「…悪ぃな。こうするしか手がないんだ。礼なら後でするけど?」
軽く笑って言うアレン。
酷い怪我だってしているのに、押さえられた手はピクリともしない。
「…馬鹿じゃん」
「…は?」
じわり、と血が滲んでいる包帯を目にし、グロアはぼそりと呟いた。
相変わらず動けないことに変わりはないものの、彼女はアレンを真っ直ぐ見上げる。
それを見たアレンはさっきのジリルの目を思い出した。
…さすが親子、といったところか。
さっきはそんな感じはしなかったけれど。


