「あれ、アレ~ン?」


急に寝転んだ青年の顔をまた覗き込むグロア。


うんざりしながらちらりとそちらを見やったアレンは、手の動きだけでどっか行け、と少女に伝えた。



すると意外にも素直に頷くグロアちゃん。



「また来るからっ!せいぜいあたしの暇つぶしになってねー♪」


「……何様?」



バタン、と閉まった扉を恨めしげに見ながらアレンは呟いた。


結局全く素直じゃなかった。


ていうか何なんだあの動き回る生き物は。




「剣さえあればこんな鎖…」



動かす度にジャラジャラうるさい腕を見て、勇者さまは思わず深い溜め息をついた。


まさかあの少女が剣を取ってくれる訳もないし、やっぱり逃げる方法は一つもない。




「ふぁあ…」



一つ欠伸をして目を閉じたアレンは、そのまま無意識に眠りの世界へと落ちていった。








――…疲れからか、扉の隙間から覗いていた影には気付かずに。