ボソリと呟いた父に首を傾げ、ディルネは彼を見上げた。


ジリルは懐かしそうにアレンを眺めながらふと笑う。




「コレの親もな、勇者だったのだ。実際に会った者は各国の王でも数少ないが。

私はその数少ない一人だ」


「…史上最強の男、って言ったら、42代目ウィスカですか?」


「あぁ。私は…あの男には恐怖さえも感じた」



呟くジリルに目を見開き、ディルネは父様が?と囁いた。


頷く悪魔の長にその娘は驚きを隠せない。




「あの者には…全てを見透かされる気がしてならなんだ。笑みこそは優しいが、私はあまり好かない」


「でももう死んでいますわ。父様に敵う脅威などありません」


「…だといいがな」



嘲笑を浮かべ言ったジリル。



いつもと少し違う父にディルネは戸惑った。



しかしそれもほんの少しの間で、ジリルはすぐにいつもの自信に満ち溢れた笑みを浮かべる。



「私に敵う脅威などない。

そして42代目ですら勝てなかった魔王を倒した、あの44代目勇者は我が手中。

今の悪魔族に恐れるモノはない」


「ふふ、その通りですわ。すぐに天使を攻めますか?」