「ミュリエル、ミカエル様が呼んでるよ」



――…真っ白な雲の上の世界。



雲で出来た地面を踏みしめ、一人の天使の男が遠くを見つめる女性に声をかけた。



振り向いた女性――レヴィオル国大天使であるミュリエルは、話しかけて来た男性を見ると首を傾げる。




「あれ、ラヴァネ?仕事は??」


「終わったよ。今は君を呼ぶのが仕事かな」



やんわり微笑み言うのは、ミュリエルの幼なじみである天使ラヴァネ。


柔らかい髪と優しい印象を与えるたれ目を持つ彼は、天使の中では結構な上の位の地位に就いていた。



見た目通り優しい彼は、さりげなく女性にもモテている。



しかしその正体を知っているのはミュリエルただ一人だった。




「ほら、連れてってあげる。行こ……、わっ!」


「あーっ、ラヴァネ!」


不意につまずいて危うく雲から落ちるところだったラヴァネ。


慌ててミュリエルが羽を広げその手をひっつかみ、よっこいせと引き上げた。




「もうっ、相変わらずヘタレねぇ」


「……手…」


「ちょっとっ、聞いてるのー?何真っ赤になってんのよぉ」