「……本当に、それでいいのか?」



──…月が街を照らす真夜中。


ある一軒家の中で、話し込む二人の男女がいた。




「……うん。でも、絶対に最後はまた…」


「…わかってる。俺はお前ら以外何もいらない。

例え、同族に非難されようともな」



普段無口なその男の言葉に、女は口元を手で覆い涙する。


それを優しく見る男。



「……私も。愛してる…」



そう呟くいつもは元気な彼女を見やり、男は溜め息をついた。




「……明日行く。城に。式典が終わればアレンも対応してくれる」


「うん…」


「…泣くな。こいつは存在がバレなければ大丈夫だ」


「うん…」



男は尚も泣き続ける女の涙を拭い、その滑らかな頬にキスをした。


それから抱き合う二人の横には、揺りかごに揺られる赤ん坊が。






「………必ず、また三人で暮らそう。

少しの辛抱だ……」





男の小さな、本当に小さな囁きは静かな部屋に吸い込まれ、そこには女の嗚咽だけがひたすら響いていた──…