最初の目的が何であったにせよ、あの旅に出て本当によかったとアレンは思っていた。
殴るのを諦め開いた足の間に座ったルルアンの頭を撫で、柔らかく目を細める。
街を出たかったとだけ言い、誰にも話さなかった目的は果たせなかった。
それでもレイ達に出会って、こうして和やかな時間を過ごせるようになった。
それだけでもう十分。
自分にはもったいないほど幸せだと思う。
「アレ~ンさま~ぁ、何ぼーっとしてんの?なぁ、明日森で遊ぼうよ!」
「あ?…持ってきた執務が終わったらな」
「やた~っ!俺魔法ちゃんと使えるようになったんだ!!森で見てよ、凄いんだから!!」
「はいはい」
嬉しそうに騒ぐルルアンの笑顔を見て苦笑いし、アレンは頷いた。
この幸せのためにも修行して強くなって、いつかはあいつ――闇王とまた戦わなければならない。
それに加えて今は天使と悪魔の件もある。
これからやることがたくさんある分、このエルフの家での休暇は存分に休ませてもらおう。


