「おかえりなさいませジリル様」




一人の男が扉をくぐり、大勢の女がそれを迎える。



自身に従う使用人を一瞥し、自らの国ジスカルに戻ったジリルティウスは居城の広間を歩いて行った。



やがて黒い絨毯の階段の前で立ち止まり、指をパチンと鳴らす。


すると一歩空いた正面に跪いた青年が現れた。



「お呼びですかジリル様」


「ディルネを王室に」


「かしこまりました」



命令を聞くと青年は立ち上がり、礼をすると身を翻す。


そして次の瞬間には、その姿は消えていなくなっていた。



ジリルは青年がいた場所に落ちた黒い羽を無表情に見てから階段を上りはじめる。



そうして辿り着いた最上階の王室に入り、銀に縁取られた黒い王座にどかっと座った。