「《氷撃魔法》」
走りながら魔法を発動させるアレン。
対して魔力を持たないギルクはただ突っ切るだけ。
「《放》――…」
ギルクが自分の場所に来ない内に、アレンは魔法を放った。
アレンの後ろに待機していた氷柱がギルクに向かう。
それは標的を見事に貫き――…
「あまいぜアレン!」
「!?」
――…違った。
貫いた、と思ったその場所にはギルクはいなく、彼はいつのまにか目の前に。
その拳が自分に向かって来るのを見て、アレンは慌てて今度は剣を繰り出した。
もちろん峰打ちだが。
そして、アレンとギルクの剣と拳は同時に相手に届き。
二人は同時に左右に吹っ飛んだ。
――…決着はついたのだろうか。
気になるところだが、アレンもギルクも仰向けに倒れたまま動かない。
「……いってぇ…」
まず、最初にそう唸ったのは赤い髪の武帝様。
彼は峰打ちされた脇腹を押さえ嘆きながら上半身を起こす。
「……アレン?」
武帝様は何の反応もない親友を見て、首を傾げた。
四つん這いで勇者が倒れている場に行き、顔を覗き込む。


