ギルクは仏頂面する親友に苦笑しながら、ガツンと両手の拳を合わせた。
「なあアレン」
「あ?」
「手合わせしようぜ」
「……は?」
ぽかんとしてギルクに目を向けるアレン。
何を言い出すんだこいつは、とその表情は語っていた。
せっかく話を聞いてやろうと(滅多にない)親切心を働かしてやったのに、いきなりこんなとこに来てそんなこと言われるなんて。
しかしギルクの真剣な漆黒の目を見て、その考えもあっさり変わる。
「…わかった」
またニヤッと笑った親友に自分も満足げに笑むと、ギルクは少しアレンから距離を取った。
アレンも下がりながら何メートルか先にいるギルクに問う。
「剣は?」
「あり!」
「魔法は?」
「あり!本気で来いやあ!!」
「…お前もな」
やたらと楽しそうに大声張り上げるギルクに笑い、アレンは自分もそう言い返してやった。
思えばギルクと正面衝突する形で戦うのは、まだ旅をしていた頃以来はじめてだ。
あの時は、自分が操られて。
自分の意思ではないのに戦った。
懐かしいな、などと暢気に思い出に浸りながら剣を鞘から抜く。
そして、身構えた。


