そして次の日。
私は約束通りクッキーを持って行った。
しかし、手作りではない。
散々悩んだあげく、私は「やっぱり作れない」という結論に辿りついてしまった。
スーパーで買ったクッキーを、買ってきた可愛い箱に詰めて、可愛くラッピングした。
約束を破ることになるが、私は本当に破滅的に料理が出来ない。
ましてやお菓子なんて出来るわけがない。
大好きな笠原にあげるのに、まずかったら嫌だ。
渡せる自信なんて、まったく起きなかった。
作れなかったと言って謝れば、なんとかなるだろうと思った。
…が、すぐに後悔した。
「…おまえこれ…」
放課後、また中廊下でこっそりカバンを開けて、クッキーを渡した。
箱を開けた瞬間、手作りではないことが当たり前だがすぐにバレた。
『…あの…やっぱり、作れなくて…』
そう笑って説明しようとした。
「…わざわざこんなラッピングしたのかよー!保坂らしいな!」
笠原は笑い飛ばした。
だけど一瞬、残念そうに微笑んだのを、私は見逃さなかった。


