ちょうどこの頃、母親が離婚した。
拓也だけでなく、もう家族全員が暴力の被害に遭っていて、夫婦喧嘩の騒がしさはご近所でも噂になるほど壮絶なものになっていたのだ。
私や弟たちからしたら万々歳だが、祖父母が住む実家に戻ったので、
学校にはバスで10分、電車で10分、徒歩10分かけて通わなければいけなくなった。
それが憂鬱だった。
そして運動会を終え、文化祭の時期を迎えた。
小学校なりに、お化け屋敷や劇、出店など普通の文化祭をやっていた。
私のクラスは、西遊記の劇をやる事になった。
もちろん私は脇役。
主役やメインキャラをやる気になど、ならなかった。
私が演じるのは、牛魔王に連れ去られた町娘。
出番は、
孫悟空たちに助けられて、お礼を言って食事などを用意して、おもてなしするだけ。
ちなみに笠原は、孫悟空の髪が変化するミニ孫悟空役だ。
なんてことない。
そう思っていた。
だけど…………


