「あんたが20で突然家を出て
お母さんは
5年間随分と探し回ったみたいでね。
やっと山葵がわかったから
来たと言う訳さ。あの子の家を教えて欲しいと言われたが、断っておいたよ。
家を出た奴は大概何かある奴が多いからね」

私は視線をぐいと床に向けた。
図星を当てられると頬が赤くなる悪い癖。

「ただ…あちらの住所を教えてもらったんだよ。彼女が会いたかったら行くでしょうとも一言付けておいたがね」


その言葉を聞き、私は
思わず笑みを作った。

「…もう私に天国はありませんよ…天国に行く資格なんて…私には…」

バシィ

重く潔のよい音が6畳を伝った。

しばらくして頬が赤らんで痛みを放っている事に気づいた。