ドン!

「ってて」

「あ、申し訳ありません」

俺は目の前を横切った人影とぶつかった。予想外のことにバランスを崩し、前のめりになって手をついちまった。

振り向くと、ぶつかった相手が俺を心配そうに見てたんだ。

そこにいたのは…そうだな、大体俺の親父くらいだと思うけど初老って感じのスーツのオッサンだった。

背格好は俺よりちょっと小さくてヒョロい、髪の毛はハゲちゃいないが半分位が白髪、メガネを直す姿がなんとも頼りない感じの

まあ、出勤時間に満員電車に乗ったら2ケタは見れるようなオッサンだったよ。

「あ、いや、こっちこそ」

相手が謝ったので俺もまあ普通に謝るよな。こう言うところで波風立てたってしょうがない。そういうのはバカのやることだ。

「お怪我はありませんか?」

「ん?あー、なんともないよ、気にしなさんな」

そう言うと俺はへらへらと笑いながら手を振って足を引く。

そのまま体を反転させて改札の方にもう一度歩き出そうとしたとき、再びの衝撃が俺の体を襲った。

ドカッ

「げっ」

「うおっ」