月光。
生温い風。
煙草に日をつける。
ガードレールにもたれ空を見上げる仁。

   
「お疲れ様です。」


従業員出口から姿を現す那智。
仁の姿が視界に入る。
俯き早歩きで仁の前を通り過ぎようとする。
   
「那智。」

足を止める那智。
   

「話しがあるんだ。」


後ろから聞こえる仁の懐かしい声。
   




「話すことなんてあらへん。」




戸惑った声。
   


「俺にはあるんだ。そのままでいいから聞いてくれないかな?」
   
「…。」
   


「今更かもしれないけど俺等やり直せない?やっぱりお前じゃないとダメなんだよ。俺には那智、お前がしかいないんだ。だから…だから…。」



震えた仁の声。
一瞬おとずれる沈黙