薄暗く静かな待合室。
きつい消毒の臭い。
一人長椅子に腰掛ける隆平。
握り締める手には汗。
落ち着かない様子の隆平。
   

「彼方が博貴君のお兄さん?」


顔を上げる隆平。
   
「大丈夫。たいしたことあらへん。」

優しく微笑むサク。
   
「そうですか。」

隆平の隣に腰を下ろすサク。
   
「あんな小さな子一人にしたらあかんよ。」
   



「…そんなの…一番俺がわかってますよ。せやけどずっと傍におれんねん。」




感情的に怒鳴る隆平。
   
「すいません。俺…。」

動揺する心。
我に返る隆平。
   
「ええんよ。君は一人で抱え込みすぎや。二人暮ししてるんやって?」

頷く隆平。
   

「無理せんと。もっと人に頼ればええねん。」
   
「どういう意味ですか?」


サクを睨む不安げな瞳。
   

「人に預けてみるとか。」
   

「博貴を施設に預けろとでも言うんですか?」



一瞬固まる空気。
   
「そういう手もあるってこと。何もかも一人でやろうなんて無理やねん。一日だけでも君自身 一人でゆっくり出来る時間を作る必要があるってことや。」
   


「御節介なんですね。」



冷たく吐き捨てる言葉。
長椅子から立ち上がる隆平。