今にでも雨が降りそうな泣き空。
雨雲が刻々と覆い迫る。
夜の街に光をもたらすのは月ではなく
店のイルミネーション。


「仁。」


女と手を繋ぎ歩く仁。
その前を引き攣った顔で立ちふさぐ那智。                   
   

「仁。その人 誰なん?」


涙を溜めた瞳。
真っ直ぐと仁を見つめる。
   

「彼女だよ。彼女。」


悪ぶれもせず隣いる女の肩を抱く仁。
溢れ出る涙で
視界がぼやける。
   

「何?妬いてるの?」   


俯く那智の姿に
口角をあげ笑う仁。
   



「最低。」




震える声。
たった一言口にするのが精一杯の那智。
頬をつたい落ちる涙。
感情が抑えられず手を振りかざす。        
覚悟を決め目瞑る仁。
   

「…。」   


いつまでたっても痛みが頬を染めない。
恐る恐る顔をあげる仁。
手を宙にあげたまま顔を涙に濡らす那智の姿。
   

「仁を殴るときっとうち後悔すると思う。それにうちの手のほうが痛なる。」


切なそうな瞳で仁を見つめる那智。
   


「今までありがとう。」



グショグショに濡れた顔で最後に仁へと微笑む。