あいつの犬〈短編〉




 


「 なんだよ? 」



不思議そうにあたしの前にしゃがみこみ、あたしの顔を覗きこむ。
晴はいつもこうやって、心配してくれるんだ。


あたし、いっつもそれに甘えてばかりじゃん。
ついこの前まで晴の優しさに気付きもしなかった。




「 あの……いつも、 」

「 うん? 」

「 ありがと 」

「 …………は? 」



わけが分からない。って感じであたしを見る晴。
そりゃそうだよね。何もしてないのに突然お礼言われてるんだし。



「 それ、だけ。 」

「 いきなり何?どうした? 」

「 もういいから行っていーよっ 」




晴を押して無理矢理向こうにおいやった。

顔が熱いのが自分でも分かる。お礼1つで何を照れてるんだか。