「七瀬先生」
長い髪をなびかせて、白衣をまとった先生が振り向く。
その瞬間がクロにとって一番幸せな時だそうだ。
振り向いた七瀬先生の笑顔は花が咲いたようにきれいだから。
「黒井くん。篠田さん。おはよう」
七瀬純子(ナナセジュンコ)先生はあたしたちが通う高校の保健医。
真っ白い白衣がよく似合っていて栗色の長い髪に瞳。
透き通るような白い肌。
優しくて少しのんびり屋で生徒の間では一番人気のある先生だ。
放課になると保健室に遊びに来る生徒は絶えない。
あたしとクロもその中の一人。
「手伝うよ」
三人分のコーヒーを用意していた七瀬先生の隣にクロが並ぶ。
肩が触れそうで触れない。
その距離はきっとクロの鼓動に響いているんだろう。
七瀬先生をまっすぐに見つめるクロの瞳はこの上なく幸せそうだった。


