時計の針の進む音がやけにリビングに響く。

クロは居間の電気も点けずに、暗闇の中でただテレビの黒い画面をぼんやりと見つめていた。

あたしが電気を点けるとクロは驚いた顔をしてあたしをゆっくりと見上げた。

その瞳はどこかうつろだった。


「七瀬先生なら大丈夫。大人しくしてるよ」


そう言うとクロは少し頷いてうなだれた。


「俺、最低だな」

「どうしてそう思うの?」

「だって俺たち好きな人の幸せを祈るどころか、壊そうとしてるんだよ」

「そんなこと今頃気付いたの?」


あたしがため息をつくとクロは困ったように苦笑いを見せた。

その顔を見て、あたしはこれでいいのだろうかと思った。

だって七瀬先生を閉じ込めてから、あたしとクロは一度だって笑ってない。

自分の幸せを望んでやったことなのに、今のあたしに残っているのはやっぱり罪悪感だけだ。