「涼子」
「なに」
「涼子は冷たいね。罪悪感とかないの?」
クロの真っ直ぐな目があたしを見下ろす。
その目はまだ迷いがあるように見えたけれど、あたしはあえて気付かぬ振りをしてクロから顔を背けた。
「ないよ」
あたしは小さく答えて再び歩き出した。
学校はもう目の前。
なんだか一人では校門をくぐる気にはなれず立ち止まっていたら後ろでぴたぴたと足音が聞こえた。
やがてその足音はあたしの隣で止まった。
「行こう。涼子」
「…いいの?クロ」
クロは少し考えてうん、と頷いた。
「きっと今逃がしても罪悪感はずっと追いかけてくると思うから」
目の前の校門はあたしとクロの運命の別れ道。
それをくぐり抜けたらもう後戻りはできない。
チャイムが鳴った。
あたしとクロは校舎に向かって走った。