手錠はどこかに繋げられてどんなに引っ張ってもぴくりとも動かない。

ただ金属の当たるうるさい音が部屋に響くだけ。

私は手首が真っ赤になるまで必死にそれを外そうとした。

鍵がないと手錠は外れない仕組みになっている。

私はどこかに鍵が落ちていないか手当たり次第に布団の周りを探した。

けれど雑誌やゲームソフトが散乱しているだけで鍵はなかった。

何で。
何で。

外でバイクの走る音がして私の心臓は跳ね上がった。

怖い。

何これ。
何これ。

ここはどこ?

何で?

怖い。

何これ。


「お父さんっ。お母さんっ」


私は無我夢中で叫んだ。

怖い。

武。


「武っ」


怖い。

誰か。





「大丈夫ですよ」


どきり、とした。

誰かの声がして振り返ると明かりがついたドアの向こうで、人影が見えた。