武はきっと武なりの考えがあったんだと思う。 五年も一緒にいたのだから私は武のことをよく知っているつもりだ。 武だって私のことをよく知っていると思う。 もう一度会って話がしたい。 話し合って話し合ってお互いが納得するまでこれまでそうしてきて五年も続いたのだから大丈夫に決まっている。 武はきっと分かってくれる。 絶対にきっと。 私はどこかでタクシーを拾おうと千鳥足で大通りに向かった。 その時だった。 指輪が音を立てて下に落ち転がっていってしまった。